ところで、考えるためには、知識はあまり役に立ちません。自分の問題意識が答えを与えるのであって、知識が答えを与えるのではありませんから。また、正しいものを積み重ねても答えは出てきません。そこで得た答えは自分の見方・考え方であって、そもそも絶対に正しいものではありませんから。
では、知識が要らないなら、その代わりに何が要るかというと、私は「型」だと思っています。以下の練習では、何を書くべきかを具体的に指示しています。それはたとえば「意見」であったり「理由」であったり「反論」であったりするわけですが、それらを「分けて」書かせることが大事なんだろうと思っています。
なお、どの練習でも「1行で」書くことを求めています。私たちの中にはいろんなものが渦巻いていますから、たくさん書くと焦点がボケるか、余計なことを書いてしまうかどちらかになるでしょう。ピンポイントでターゲットを狙い撃ちするには「1行で」書くに限ります。
これから示すものは「書くための型」であり、それは同時に「考えるための型」でもあります。私はそう思っています。誰でも使えるシンプルな「型」、いろんな場面で使える汎用性のある「型」、それだけで一定レベルまで達成できるだけの力がある「型」、そういうものになっているでしょうか。
実習 | 課題 | 文章例 | 備考 |
1 | 問題と解決をセットで挙げる | 例文 | 考える力と問題解決力 |
2 | ポツダム宣言を要約する | 例文 | はじめての要約 |
3 | 2つの視点で語る | 例文 | 2本の軸を立てる |
4 | 理由を3つ挙げる | 例文 | なぜ3なのか? |
5 | 理由を3つ挙げる(その2) | 例文 | 続・なぜ3なのか? |
6 | 4段論法 | 例文 | 3段論法と4段論法は別物 |
7 | 意見と理由と反論をセットで挙げる | 例文 | そもそも議論とは何なのか? |
ところでみなさんは、学校で文章の書き方を習ったことがありますか? 私は記憶にありません。何度も作文や感想文を書かされましたが、何をどのように書けばいいのか、教わった記憶が無いのです。
学校で作文や感想文を書く機会はたくさんありますが、作文のマニュアルもフォーマットもない。書き方を知らない生徒に漠然としたテーマだけを与えて、「感じたとおりに、自由に書きなさい」と言い放つ。レイアウトは原稿用紙のマス目だけ ・・・ 日本の学校の作文指導はおよそこんな感じではないでしょうか。
でも、私は思うのです。書くべきは「感想」ではなくて「見方(視点)」です。「意見」よりも「理由(根拠)」です。漠然とした課題を与えるより、「何を書くかを具体的に指示する」べきです。たくさん書かせるより、「要点」を書かせるべきです。「自由に」書かせるより、内容ごとに「分けて書く」ためのレイアウトを与えるべきです。
学校では「答のある問題」の書き方は懇切丁寧に指導するのに、なぜか「答の無い問題」についてはほとんど手ぶらです。漢字の書き取りや英語の文法、数学の証明問題などでは書き方をガチガチに型にはめる一方で、文章を書いたり考えたりすることについては「勝手にどうぞ」と言わんばかりの放任主義 ・・・ このように言ったら言い過ぎでしょうか。
学校で最低限の書き方の練習、考え方の練習をやった方がいいんじゃないですか。それほどべらぼうに時間のかかることじゃありませんので、少なくとも初心者に対しては何度か練習をした方がいいんじゃないですか。ほんの2、3回でもやるのとやらないのとでは大違いです。ここに紹介したものは、そのための教材です。
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