2019年3月26日火曜日

リキシャはどこから湧いてくるか?

(2012年春)

 足こぎ自転車タクシー がバングラデシュじゅうで走っています。「リキシャ」と呼ばれています。日本語の人力車と音が似ています。
 1~2 kmほどの距離を移動して運賃は 10 タカ~(1 タカ≒1 円)。この安さのために、庶民も気軽に利用します。なぜこんなにも安いかというと、台数が多いからです。だからみんなで頻繁に使っても、まだまだあふれています。
 実際ダッカの街中では車とバスと CNG タクシーとリキシャがいっしょになって、いつでも大渋滞です。旧市街の狭い道ではリキシャの渋滞も日常です。


 さて、これだけたくさんのリキシャがどこから湧いてくるのでしょうか? 私の見たところ、その供給源はスラムです。
 ダッカのスラムは線路わき、湿地周辺などにあります。その一角にたくさんのリキシャが割と整然と並んでいます。そこから毎朝、ダッカじゅうに散っていくのでしょう。写真下中と右下は雨季には水に浸かる場所なのでしょう。乾季の今は水が引いて、支柱の竹がにょきにょき見えます。こういう場所にもスラムは多い。

 人力自転車タクシーはかつて東南アジア一帯でよくある光景でした。ところがモータリゼーションの波に押されて、最近では東南アジアではあまり見かけなくなりました。最近では自動車タクシーももちろんたくさん走っていますが、東南アジアで増えているのはモーターバイクタクシーです。要するにモーターバイクの後部座席に客を乗せて2人乗りで走るスタイルです。
 バングラデシュにもモータリゼーションの波は確実に押し寄せています。他の国とは少々形は違いますが、前々回と前回に紹介したようにダッカでは CNG タクシー が、他の街では EV タクシー がたくさん走っています。そしてそれらを上回る数の リキシャ がバングラデシュ全土を走っています。それらが混然一体となって、もちろんバスや乗用車も走っていますから、特にダッカの街は世界一の大渋滞となっています。

前々回の CNG 車 と前回の EV 車 と今回の リキシャ、以上で「バングラデシュのタクシー図鑑」完成です。
 いずれも石油を使わないタクシーで、その意味で新しい。
 また、いずれも他の国ではあまり見かけない、もしくは見かけなくなったタクシーで、その意味で珍しい。
 さらに、いずれも三輪。その点がなんだか妙に懐かしい。

 日本で新エネルギーというと、ポピュラーなのは太陽光と風力と原子力でしょうか。ところで、それらはいずれも「発電」のためのものです。一方、私がバングラデシュで見た新エネルギーは、いずれも「輸送」のためのものでした。
 私は考えました。「電気と輸送、大事なのはどっちなんだろう?」と。
 そして思い至りました。「電気よりも、輸送の方が大事だ」と。考えてみると、まず食糧が届かなければ生きていけません。また、部品や製品が届かなければ通信できませんし、人の行き来がなければ通信する意味もありません。そう、現代社会を成り立たせているのは輸送で、それがあるという条件の下で電気が生きるのです。

 バングラデシュのタクシー事情は、ずいぶん先を進んでいるようでもあり、はてまたずいぶん遅れているようでもある。でも、一番大事なところ(=輸送)でうごめいている。そういう目で見ると、とても面白いのです。
 理系トラベラーの私はついそういうところに目が行ってしまいます。そして、あれやこれや質問する。そうすれば、みんな快く答えてくれます。


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