(2012年春)
CNG とは Compressed Natural Gas の略で、圧縮天然ガスのこと。それを燃料にして走る車が、ダッカの主力のタクシーです。多くは緑色をしています。車体は小さい。バンドルと前輪タイヤの形状は原付バイクとそっくりで、パワーも原付並み。そのタクシー、現地ではそのまんま「CNG」と呼ばれています。
ダッカ市内の CNG ステーションに行ってみました。CNG タンクと容量計は後部座席のイスの下にあります。ガソリンを給油するホースより細いホースで CNG を注入します。
タクシーだけではありません。ここダッカでは自家用車もトラックもバスも CNG で走る車がたくさん走っています。
ところで、バングラデシュで走る自家用車の多くは日本の中古車です。日本の車庫証明や車検マークが貼ったままになっているから間違いありません。つまり、日本ではガソリンで走っていた車を CNG でも走れるように改造したということです。にわかには信じがたいですが、現に私はたくさん見たので、これが事実です。これだけ多くの車が改造しているということは、法律等で義務付けているのかもしれません。
自家用車の場合、CNG タンクは後のトランクの中にあります。でも、CNG を注入するのは前のエンジンルームです。この車、ガソリンと CNG の併用車です。両方の燃料が入っている場合は、まず CNG を先に使い、CNG が空になったら 自動でガソリン駆動に切り替わるという話です。にわかには信じがたいですが、ドライバーも CNG ステーションのおじさんもそう言うんだから、信じるしかありません。
さて、次の問題は燃料の価格です。以下に出てくる数字は2012年春時点のものです。金額をバングラディッシュの通貨タカで記載しますが、1 タカ≒ 1 円なので、「タカ」を「円」と読んでください。
◇ CNG タクシーの燃料を満タンにするのに 300 タカ、それで 150 kmほど走る。計算してみましょう。CNG タクシーの燃費は 2 タカ/km。同じ程度のもの(50ccバイク程度の性能)をガソリンやディーゼルで動かした場合、30 km/ℓ 進むとすれば、燃費はガソリンで 3 タカ/km、ディーゼルで 2 タカ/km。つまり、
◇ 当時のガソリン価格は 94 タカ/ℓ、ディーゼル価格は 61 タカ/ℓ。
◇ 同じ距離を進むのにかかる燃料代は、ガソリン>ディーゼル≒CNGとなります。ドライバーと CNG ステーションのおじさんにこの計算を見せたら「まぁそんなもんだろう」と言っていました。だから、たぶんそこそこ合っていると思うことにします。
次に、CNG タクシーの車体価格。何人かに聞いてみたところ、新車で買った場合の価格は 80 万タカ~100 万タカの間に収まりました。日本の感覚からするとちょっと高すぎるように思いましたが、税金が高ければこれくらいになるのかもしれません。現地で自家用車を新車で買った場合の価格が 200 万タカくらいということですから、まぁ妥当かなと思いました。
ベンガル湾沖合で大きな天然ガス田が見つかって、開発が進んでいるといいます。ダッカでたくさんの CNG 車が走り回るのは、それと関連した動きなんでしょう。ガソリン車を CNG 兼用車に改造する技術も普及し、CNG ステーションなどのインフラも、ダッカでは整っています。
日本でもガスを燃料にして走るタクシーはありますが、そのほとんどは CNG(Compressed Natural Gas=圧縮天然ガス)ではなくて、LPG(Liquefied Petroleum Gas=液化石油ガス≒プロパンガス)です。そして CNG にせよ LPG にせよ日本では充填用スタンドが普及していませんから、個人が CNG もしくは LPG の自家用車を所有するのはまだあまり現実的ではないでしょう。
でもダッカでは2012年時点でこんなにも CNG 車が普及しています。アジア最貧国とも称されるバングラデシュですが、こと CNG に関しては最先端を走っていると言えるのかもしれません。
最初に書いたように、ダッカで CNG と言えば写真にあるような緑色の小さいタクシーのことを言います。ダッカを旅行する際は時々利用することになるでしょう。ダッカは人口一千万人を超える大都会で、交通渋滞のひどさは私の知る限り世界一です。そのことを考えると、車体が小さくて小回りが利く CNG は裏路地を進んだりすることもできて、普通乗用車タイプのタクシーより良い点もいろいろあります。
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