2020年12月3日木曜日

同一労働同一賃金が起きる場所

 先進国と発展途上国の給与水準と物価水準はこれまで大きく開いていたが、これからはだんだん近づいていくだろう。それがグローバル経済の一つの帰結である。人と物が国境を越えて自由に行き来するこれからの世界では、これまでの先進国で給与水準が下がり、物価水準も下がる(デフレ)のは必然である。 別の言い方をしよう。日本の高い人件費を避けて、工場が人件費の安い発展途上国に移転する動きがあるが、それを阻止するのは簡単だ。日本人の賃金を下げればいいのである。そうすれば、工場は国内にとどまる。
 いや、無理に下げなくても、工場が移転した先では人件費が上がり、工場が去った日本では人件費が下がって、その差はだんだん小さくなっていくだろう。需要と供給の関係を考えれば、そういうことになる。

 「同一労働同一賃金」という言葉がある。 最近の使われ方は、こうだ。「正社員と派遣社員が同じ仕事をしているのに賃金が違うのはおかしい。派遣社員の給与を正社員並みに引き上げろ」と。この言い方の前半部分は正しいが、後半部分は間違っている。
 逆だ。派遣社員の急増は、日本人の人件費を下げる方向への力がすでに働いていることの現れである。でも、まだ終わっていない。労働者の一部はすでに賃金が下がり始めているが、これからは残りの労働者の賃金が下がるだろうからである。むしろ、今後は「正社員の給料が派遣社員並みに下がる」ことを想定するべきだろう。そういう形で、同一労働同一賃金になっていくのだろう。
 ブルーワーカー(工場労働者)だけではない。ホワイトワーカー(オフィス労働者)も間もなくそうなるだろう。日本のホワイトワーカーが外国のホワイトワーカーに比べて生産性が特に高いわけではないだろう。であれば、日本のホワイトワーカーだけが高い賃金をこれからも得つづける道理などあるはずがない。
 同一労働同一賃金は世界規模で起きるのである。その動きは、日本人の給与水準がミャンマー人の給与水準と同じ程度になるまで続くだろう。ちなみに、物価水準も下がるから、必ずしも日本人が貧しくなるとは限らない。

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