情報科の定期試験で出した記述式問題「原発事故損害を誰が負担するか?」のダメ答案を類別してみる。
まずは「根拠」の挙げ方のダメな(根拠になっていない)もの を取り上げる。
◇ 主張を繰り返しているだけ のもの
(A) 主張 「東京電力から電力を買う消費者が負担するべきだ(電気料金値上げ)」に対して、
根拠 「東電から電力を買って(使って)いたから」
(B) 主張 「東京電力に融資している金融機関が負担するべきだ(債権の放棄・棒引き)」に対して、
根拠 「東電に融資したから」
(C) 主張 「原発を有する他の電力会社(沖縄電力以外の全電力会社)が負担するべきだ」 に対して、
根拠 「原発を運転していたから」
これらは根拠というより、主張を繰り返しているにすぎない。
また、これらを根拠と認めたとしても「事故による損害賠償責任を負う」根拠としては弱すぎる 。
※ 「連帯責任」と書いているものも多かったが、連帯責任を負わせることはジュネーブ条約違反だ。
それは学校では通用しても一般社会では通用しない。
◇ 主張と根拠が結びつかない もの
(D) 主張 「現在の納税者が負担するべきだ(増税)」に対して、
根拠 「誰の責任かを言ってる場合じゃないから」
(E) 主張 「未来の納税者が負担するべきだ(赤字国債発行)」に対して、
根拠 「津波被害の復興にも多額のお金がかかるから」
(G) 主張 「事故の被害を受けた住民が負担するべきだ(泣き寝入り)」に対して、
根拠 「国にはお金が無いから」
いずれの根拠も (A) ~ (G) のどの主張ともつながらない 。
あるいは、他の根拠と組み合わせれば (A) ~ (G) のどの主張ともつながってしまう。
◇ ターゲットがズレている もの
(A) 主張 「東京電力から電力を買う消費者が負担するべきだ(電気料金値上げ)」に対して、
根拠 「電気料金が上がった方が節電になるから」→ ここでは損害賠償の話をしているのだ。
(F) 主張 「国家公務員が負担するべきだ(給与削減)」に対して、
根拠 「国が原子力発電を進めてきたから」 → 国と国家公務員は別物だ。
(G) 主張 「事故の被害を受けた住民が負担するべきだ(泣き寝入り)」 に対して、
根拠 「これまでに多額の交付金・助成金を受けてきたから」→ 被害はもっと広範囲に及んでいる。
これらは「主張と根拠」のズレだが、同じようなズレは「根拠と反論」 、「主張と反論」の間でも起こりうる。
生徒たちが書く文章はしばしばトリプルでズレるから、要注意。
次回は「反論」の仕方のダメな(反論になっていない)ものを取り上げる。
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