ロールパンナは、アンパンマンの仲間たちの中で特異な存在である。ジャムおじさんがまごころ草を入れてパンを焼いた。バイキンマンがこっそりバイキン草を入れた。そのために、ロールパンナはやさしい心と悪い心をあわせ持つようになった。ロールパンナの胸の赤いハートはやさしい心を、青いハートは悪い心を表わしている。
ロールパンナはパン工場で生まれたが、しばしばバイキン城に出入りする。もともとのバイキン城の住人以外で、唯一バイキン城に出入りできるのが、ロールパンナである。
ロールパンナは日本神話でいうとスサノオのような存在である。スサノオもまた天上界の住人でありながら地上界と冥界を自由に行き来する。両者とも強くてカッコいい。荒ぶれ姿もまた魅力的。
ロールパンナの青いハートが動き出すと、ロールパンナはアンパンマンを攻撃する。「アンパンマンをやっつける」、これが彼女の口癖であり、目標である。アンパンマンは「ロールパンナちゃん、君とは戦えないよ」と言ってる間に、いつもやっつけられる。
そんなアンパンマンを助けるのは、人の言葉であって、ジャムおじさんが焼く新しい顔ではない。このときばかりは「アンパンマン、新しい顔よ!」というお決まりの展開にはならない。ロールパンナの攻撃を止めるのは、メロンパンナの「ロールパンナおねえちゃーん!」という声であり、てんどん母さんの「あんたはやさしい子だよ」という言葉なのだ。そうすると、ロールパンナの赤いハートが動き出して、やさしい心を取り戻す。
アンパンマン・ワールドに悪人はいない。バイキンマンとて、憎めないいたずらっ子であって、悪人ではない。荒ぶるロールパンナを悪と呼んではいけない。それは事態を変えたりはしない。荒ぶるロールパンナに正義の力を振りかざしてはいけない。彼女は敵ではないのだから。
やさしい心を取り戻したロールパンナにメロンパンナが言う、「ねぇ、みんなといっしょにパン工場で暮らそっ」。ロールパンナは何も言わずに去っていく。「私にはまぶしすぎる」とつぶやきながら。ジャムおじさんが言う、「いつか必ず一緒に暮らせる日がやってくるよ」。みんなそれを信じている。
実はピーターという昆虫のようなバイオリン弾きがドキンちゃんにさらわれてバイキン城に連れていかれたことがある。「ロールパンナとピーター」の回。
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