2019年4月4日木曜日

「てにをは」の罠

 「てにをは」は言葉に膨らみを持たせてくれるとても便利なものだ。けれども、それを日本語の「縛り」のように感じて、使いにくいと感じている人が多いようだ。そういう人は、むしろ漢語(熟語)や英単語を使いたがる。
 先日の出来事である。ある人が「地域コミュニティーの交流に貢献します」という文を書いてみたが、どうもしっくりこないと言う。彼から話を聞いて、ボクが提案した。
 「この地区で働く人、住む人、訪れる人の懸け橋になります」と書いたらどうだ、と。

 そうしたら彼は「てにをは がおかしい」と言う。「この地区 働く人、この地区 住む人、この地区 訪れる人」にしなきゃならないが、これじゃ「この地区」が何度も出てきて良くない。だったら「この地区の労働者、住民、訪問者」の方が自然だ、と。
 いや、そうでもないのである。「この地区」が「懸け橋になる」に係っていると思えば、まったく正しい使い方だ。
           ┌――――――――――――――――――┐
           |                  ↓
       「この地区で 働く人、住む人、訪れる人の 懸け橋になります
           |   ↑
           └―――┘

 そうしたら彼はこう言った。「人は前から順番に読んでいくんだから、そんなふうには読まないだろう」と。
 いや、だからそれでいいのである。前から順番に読んでいけば「この地区 働く」となって、とても耳触りがいいのである。しかも文法的には「この地区 懸け橋になる」のだから、どこもおかしくないのである。
 和語(=やまとことば=訓読みの日本語)と「てにをは」をうまく使って、やわらかい日本語で語ろう。そこに日本語の細やかさがある。今どきの日本ではその方が人の心に響く。(←↑和語で書いてみた)
 「てにをは」を避けて漢語(=熟語=音読みの日本語)や英単語(=カタカナ言葉)を使う方が簡単だが、微妙なニュアンスを表現できない。ありきたりで読者のハートに届かない。(←↑熟語・英単語を多用してみた)

0 件のコメント:

コメントを投稿