2019年3月25日月曜日

こぶとり爺さんの不条理

 爺さんAが鬼の前で踊りを踊ったら、鬼は爺さんのこぶを取り上げた。
 爺さんBが鬼の前で踊りを踊ったら、鬼は爺さんにこぶをくっ付けた。

 昔話では、一人は良い爺さんで踊りが上手く、もう一人は悪い爺さんで踊りが下手だということになっている。しかしこの設定は、話の本質とは関係ない。鬼はこぶを質として預かったのだが、鬼がそれを選んだ訳は「爺さんの大事なもの」と勘違いしたからだ。
 鬼が勘違いすることなく、爺さんの本当に大事なもの、たとえば宝物を預かったとしたら、どうなるか。その場合、先に踊った良い爺さんが損をして、後に踊った悪い爺さんが得することになる。
 場合によってはそういう展開になったかもしれないのである。得したのが良い爺さんで、損したのが悪い爺さんだったというのは、たまたま偶然にそうなったにすぎない。だから結局のところ、爺さんが良い人か悪い人か、踊りが上手いか下手かは、この話には関係ないのだ。

 では、この昔話の言わんとしていることは何なのか。
 二人の同じような爺さんが同じように行動したら、一人はエラク得をして、もう一人はエラク損をした。それだけのことなのだ。鬼は不条理の象徴である。人間どもには鬼をどうすることもできない。
 それを受け入れろ。これが昔話「こぶとり爺さん」の本質だと思う。


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