2019年4月2日火曜日

所得税の最高税率はなぜ下がったのか?

 財務省のサイトに「主要国の所得税率の推移」が載っている。それを見ると、1980年以前の日・米・英の所得税の最高税率は70%~83%と高かった。地方税を除いた国税分だけの数値である。
 現在の日・米・英の所得税の最高税率は37%~45%である。1980年以前と比べて30~40ポイントも下がったことになる。財務省のサイトには出ていないが、他の先進国も同じような推移を辿っている。
 税金の大きな役割は所得再分配であるが、この変化を見ると、福祉国家は過去のものになったということなのかもしれない。そして、経済格差が広がるのは当然の結果と言えるだろう。

 さて、問題は「所得税の最高税率はなぜ下がったのか?」である。あるいは、言い換えると「かつての最高税率はなぜ高かったのか?」である。
 ズバリ答えを言おう。かつての最高税率が高かった理由は「平等社会を謳う共産主義に対抗するため」である。最高税率が下がった理由は「共産主義がほとんど崩壊したから」である。
 すなわち、かつての西側政府にとって最高税率を高くして所得再分配効果を強くしておくことは、自国民が共産主義に惹かれないように、「資本主義でも平等に近い社会が築ける」ことを自国民に知らしめるために必要な施策だったのだ。そして共産主義がほとんど崩壊した現在、その必要性が無くなったから、所得を再分配する必然性も無くなったということだ。
 他に理由は無い。だから所得税の最高税率は下がったのである。

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