東京タワーは岬の先端にあるのである。今は海岸線から離れているが、かつてそこは岬の先端だった。そういうところには魔物が住んでいる。そして、聖なる場所なのである。
だから、人を引き寄せるのだ。それが、東京タワーの人気の秘密である。
東京タワーの北側は東京タワーの敷地と同じ高さだが、東と西と南側は土地が下がっている。東京タワーを挟んで南北に走る日比谷通りと桜田通りが今ある場所は、かつて入り江だった。
東京タワーのすぐ南隣に小さな祠がある。その昔、そこが岬の突端だった。だから、今でも祠があるのだ。
その裏は崖だ。その昔、そこに波が打ち寄せていた。その先に東京湾が広がっていた。
東京タワーの近くを歩いてみると、わかる。
そういう場所だから、東京タワーは今でも一種独特な空間なのである。東京タワーに行くなら、展望台に登るよりタワーの足元に立つ建物の中を散策する方が面白い。そこに魔物が生きているからである。そして、今どきこんな場所は他のどこにも残っていないからである。
土産物売場(左上)、屋上遊園地(右上)、ろう人形館(左下)、似顔絵師(右下)、現代的な感覚では、なぜこういうものが東京のど真ん中にあるのか、不思議なものばかりである。
これが東京タワーの魅力である。あの場所が持つ魔力である。我々の中に息づく縄文の記憶を呼び起こしているのである。
東京スカイツリーにこの力は無い。ありえない。あそこは海の底だったからである。
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