2019年4月3日水曜日

アンパンマンの不思議を神話で読み解く

まずは、アンパンマンの不思議から。

◇ バイキンマンはあんなに魅力的なのに、アンパンマンはなぜ冴えないのか?
 バイキンマンはメカを自作し、一人でアンパンマンに立ち向かう。一方、アンパンマンは一人では何も出来ない。ジャムおじさんに新しい顔を焼いてもらったり、しょくパンマン・カレーパンマンの助けを借りたり。アンパンマンの顔だって決してカッコいいとは言えない。なのに正義のヒーロー。なぜだ?

◇ カバも天丼も長ネギもしゃべるのに、名犬チーズはなぜしゃべらないのか?
 アンパンマンの仲間たちの中で唯一しゃべらないのが、名犬チーズである。パン工場に住んで、バタコさんといっしょにジャムおじさんとアンパンマンをサポートし、アンパンマン号の運転もする重要なキャラクターである。なのにワンワンほえるだけ。なぜだ?

◇ 美少年系美少女のロールパンナちゃんは、なぜいつも顔を隠しているのか?
 このキャラクターは、アンパンマンの仲間たちの中で特異な存在である。ジャムおじさんが「まごころ草」を入れてパンを焼いた。バイキンマンがこっそり「バイキン草」を入れた。そのせいで、やさしい心と悪い心をあわせ持つようになった。この存在は何を意味するのか?

 さて、ボクは以前の記事に書きました。「アンパンマン・ワールドは八百万の神の国であり、アンパンマンの仲間たちはみんな神である」と。そう考えると、上の不思議はすべて納得できます。その線で、不思議をひも解いてみましょう。
 パン工場は天上界、みんなの街とミミ先生の学校が地上界、バイキン城はあの世です。
 ジャムおじさんとバタこさんは、古事記の世界で言うと、イザナギ(伊邪那岐)とイザナミ(伊邪那美)にあたります。イザナギとイザナミは3人の神を生みました。アマテラス(天照)とツクヨミ(月読)とスサノオ(須佐之男)です。

◇ アンパンマンは、たとえて言うなら、アマテラスです。
 アマテラスは古事記世界の最高神、太陽神です。アンパンマンのまぁるい顔は太陽そのものです。
 アマテラスの系図を下れば、天皇につながります。歴代天皇が権力を握っていたことはほとんどなくて、大抵は担がれていました。力というより、シンボルです。象徴と言ってもいいでしょう。同様に、アンパンマンもシンボルです。だから、冴えない。アンパンマンが強いのではなく、みんながアンパンマンを支えるから強いのです。

◇ ロールパンナは、たとえて言うなら、スサノオです。
 ロールパンナはパン工場で生まれたが、しばしばバイキン城に出入りします。もともとのバイキン城の住人以外で、唯一バイキン城に出入りできるのが、ロールパンナです。アンパンマンも他の仲間たちも絶対にバイキン城には行きません。
 スサノオもまた天上界の住人でありながら地上界とあの世を自由に行き来します。両者の立ち位置は同じなのです。だから両者とも勇ましくてカッコいい。弱い面や醜い面も時折見せます。荒ぶれ姿もまた魅力的。神々の中で最も人間っぽい存在だと言えるかもしれません。

◇ 名犬チーズは、たとえて言うなら、ツクヨミです。
 ツクヨミはアマテラス・スサノオと同時に生まれた兄弟なのに、古事記の中ではなぜか影が薄いのです。アマテラス・スサノオに関する記述はたっぷりあるのに、ツクヨミについてのエピソードはほとんど何もありません。ツクヨミは月読だから、夜の世界ひいては天体の動きつまりは季節や時を支配していると思われる存在なのに、表にはほとんど出てこないのです。
 名犬チーズもそうなのでしょう。とぼけたようにワンワンほえながら、実はパン工場を仕切っているのです。

 アンパンマンは日本人の心です。だから、アンパンマンはおもしろい。ボクはアンパンマンが大好きです。

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